記憶喪失には前向性健忘、一過性全健忘(TGA)などの症状があり、

回復まで早くて24時間以内もかかってしまう。

 また、記憶を失った者は、外側からの情報を信じやすくなり、

例え嘘を吹き込まれても信じやすい傾向にあるようだ。

 

 ある日の放課後――

 

「何てくだらない人生なんだ……」

 

 退屈な日々にゲンナリだ。

 いっその事、誰でも良い。手ごろな女を犯してやりたいぜ。

 俺はいつも、そんことばかりを考えていた……。

 そんな俺に、またと無いチャンスがやってきた。

 ランニング中らしき体操着姿の女の子が、校門前で俺とすれ違いざま唐突に倒れこむ。

 

――声をかけた少女には記憶が無かった――

 

 何てラッキーな俺。早速少女を助けるフリをして保健室へ連れ込む。

 

「俺は医者の息子なんだ、身を任せてくれれば記憶を戻してやる事ができるぜ」

 

「えっ、本当ですか? 本当なら戻して欲しいです!」

 

 記憶喪失少女は、普段なら嘘だとわかる擦り込みにも気づかず鵜呑みにしている。

 俺はそれを利用して、少女の上着越しの胸を揉みながら、どんどん偽情報を擦り込んでいく。

 当然、少女はか細い喘ぎを上げながら抵抗の言葉を漏らしだす。

 

「こ、こんな事をして……んんっ、ほ、本当に記憶が戻るんでしょうか?」

 

「俺を信じろ! これは快感を刺激して記憶を呼び戻す為の医療方法なんだ」

 

 力強いハッタリをかますと、少女もこれ以上は疑う事なく信じてしまう。

 その間も俺の手は着実に少女の服を脱がし、後はブラのホックを外すだけだ。

 外すだけで生乳だ!

 もう少しで少女の胸が拝めると思った瞬間――

 

「し、しまった!?」

 

 ドアの開閉音と共に、邪魔な保健委員らしき男が入ってきた。

 俺の邪魔をするヤツは誰であろうと鉄拳制裁だ!!

 

「あははっ、あははっ、あははははっ……!」

 

 

 

 

「はぁ~あ………そんな事があれば良いのになぁ……」

 

 鬱屈した日々に、妄想が勝手に一人走りしてしまいそうだ。

 

「あ~あっ……どっかに記憶の無い少女が倒れてねぇーかなぁ……」

 

 いる訳が無い。

 そんなツッコミを自分に浴びせながら家路へつくのだった。

 

 

 

『93式  妄想なら擦り込めるのに……』

 

 

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